小説 5話 

 
 
 
    「すまない。彼を見つけることはできなかった。」
 
    俺は目の前の子にそう言った。
 
    彼女からの返事はない。
 
    
    かなり気まずい。
 
    もっと言葉を選ぶべきだったと後悔した。
 
    「しかし俺の仲間が必ず探し出してくれるはずだ。
 
     俺も最善の努力をする。」
 
    そういって俺は、その場から
 
    逃げるように立ち去った。
 
    ・・・・・人の気持ちを考えて言葉を選ぶのは苦手だ。
 
    彼女は俺の言葉を聞いてどう思ったのだろうか。
 
    そんなことを思いながら、
 
    俺は、ヘリコプターに乗り山のほうに向かう。
 
 
 
 
    ヘリコプターを降り、俺は
 
    森の西側にそびえる山―ファイアベルグと呼ばれる山に
 
    入っていく。
 
    ここが、例の金鉱が見つかった山だ。
 
    表面温度が約50度で
 
    しばしばファイアーバードが上空を飛び交うことが
 
    名前の由来となっている。
 
 
    
    「そろそろ、壁を立てるよ。」
 
 
   
    クラウスはそう言って、
 
    地面に手をつける。
 
    すると、山を包み隠すように
 
    岩でできた壁が
 
    地面から生えてくる。
 
    太陽が隠れ、
 
    光源がなくなるとともに
 
    俺は、
 
    手に持っている金属片を
 
    懐中電灯に変えた。
 
    とりあえず
 
    働いている人を探しにいこう。
 
 
 
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   「さあ、探しに行こうか。」
 
 
 
   長い沈黙の中、
 
   ホワイトが口を開いた。
 
   探しに行く。
 
   私もそうするべきだとは思う。
 
   しかし、一緒には行きたくない。
 
 
   
   「でも、僕も一応
 
    職場での立場もあるし、
 
    か弱い女性を危険な所に
 
    置き去りにはできないんだけど。」
 
 
 
   ・・・か弱い?
 
   私は一応冒険者として
 
   旅をしている。
 
   猛獣も何体か倒したことがある。
 
   全然か弱くなんてない。
 
   確かにまだ
 
   経験が少ないし、未熟だけど、
 
   自分の身くらい自分で守れる。
 
 
  
   「じゃあ・・・・
 
    ここで試してみる?」
 
 
   
   ?
 
   一体どういう意味だろう。
 
   すると、ホワイトは
 
   笑顔になり、
 
   ポケットから小さなナイフを
 
   取り出す。
 
 
   
   「君の持っている剣の4分の1ほどの
 
    大きさだから、
 
    十分なハンデになるかな。」
 
    そう言いながら、
   
 
   ホワイトは素早く動き
 
   私の喉笛を切りつけようとする。
 
   それをなんとかかわし、
 
   剣を持って反撃する。
 
   しかし、私の剣は何度も空を切るだけ。
 
   そして距離を詰められてから
 
   ナイフの柄で手を殴られ、
 
   私は思わず剣を手放してしまった。
 
   そしてホワイトは
 
   剣を蹴り、
 
   私の首にナイフを突き立てる。
 
   ・・・・・動きに無駄がない。
 
 
 
   「まだまだ甘いね。
 
    これじゃあ放っておけないな。
 
    でも僕は加減が出来なくて、
 
    もしかしたらこのまま刺しちゃうかも。」
 
 
   やばい!
 
   私は逃げようとした。
 
   しかしすぐに捕まってしまった。
 
 
   
   「抵抗しても無駄だって。
 
    誰も助けになんて・・・
 
 
   
   ホワイトがそう言いかけたとき、
 
   地面から大木が生えてきて
 
   ホワイトを殴り飛ばす。
 
 
   
   「大丈夫?」
 
 
  
   茂みから声が聞こえる。
 
   そこから現れたのは、
 
   綺麗な金色の髪をした少女だった。
 
 
   「一体何故ここにいるんだ
 
    クラウス。
 
    おかげで僕の計画が
 
    台無しじゃないか。」
 
 
   「ホワイト、お前の方こそ
 
    何をやっているんだ?
 
    ブラックソードは
 
    その子の面倒を見ろと言ったはずだろ。」
 
 
   「へえ、なるほど。
 
    ブラックソードは不在なのかな。」
 
 
 
   何やら、ピリピリとした空気が二人の間を流れる。
 
 
   
   
   To be continued